5:ヴァルゲイルのグリーハウス・スタジオ訪問、交響楽団来日中止の怪、アート音楽ライブ |
経済危機の、このドサクサに紛れて既に計画済みのアルミ工場の規模を大きくしようとしたり、環境保護法を反故にして新たにアルミ工場を作ってしまおうという計画も出てきているようです。聞き捨てならない! ビョークもこのような状態に業を煮やしたのでしょう。アイスランドは外貨獲得のためにひとつの産業に頼る傾向にあるために争いや問題が多くなりがちでした。タラ頼みの漁業もそうだし、電力頼みのアルミの精錬も。そういうものではなく、これからは様々な産業を国内に興し、アイスランドの美しい自然を生かしたサステイナブルな企業や技術、その魅力をビジネスにすべきではないかと、アイスランドのニュース番組に出演して語ったそうです。 ビョークはそういった起業家を応援するため、急遽、新曲の『Nattuura』をリリース。ドラム・ビートの効いたパワフルな曲で、トム・ヨークのバック・ヴォーカル入り。売り上げは全額上記のようなプロジェクトの育成に寄与されるそうなので、アイスランドを応援したいみなさん、ぜひご購入ください。こちらにあります。 それでは、10月に行ってきたアイスランド出張日記の続きです。 10月14日(火)アイスランド音楽シーンのそこかしこ 9:00 再びレイキャヴィクへ イサフョルズルのホテルを出て飛行場へ。車だと5分もしないうちに到着してしまいます。あまりにもスイスイで、日本の首都圏の物事しか知らないと拍子抜けするほど。空港の外には池なのか大きな水たまりなのかがあり、そこに写る山がキレイ。 見る物すべてがきれいでたまりません。 このプロペラ機でレイキャヴィクへ向かいます。イサフョルズルからレイキャヴィクまで、実質的な飛行時間は30分強。 上空から見たイサフョルズルの街。小さい!! 上記のイサフョルズルに比べると、さすがにレイキャヴィクは都会だわぁ。 オンタイムでレイキャヴィクに戻って来られたので、市内でゆっくりランチをとることに。アイスランドは魚介類とラムがおいしいことで有名ですが、チキンもラム同様に臭みがなく、フワフワでとてもおいしいです。これはチキンサラダ。 13:00 ヴェルゲイルのグリーンハウス・スタジオへ さて、アイスランド・エアウエイブスに先駆け、今日から音楽シーンに突入。ランチ後に向かったのは、ビョークのエンジニアやサウンド・クリエイターとして有名なヴァルゲイル・シグルドソンのグリーンハウス・スタジオ。 ここはすごく、すご〜〜くキレイで設備も見るからにゴージャス。寝泊まりできる部屋も、スタジオのすぐ横に完備。このスタジオは2階にあります。 1階には簡易なライブができるような楽器置き場があり、ピアノやオルガンが所狭しと何台も置いてありました。完全消音になるような小部屋もあり、ここで一式レコーディングができるようになっていました。 1階の別部屋に集まっていたグリーンハウス・スタジオの楽しい仲間達。みんな仲が良く、雰囲気がすこぶるよくて、ずっとこの場に身を置いていたくなります。 せっかくここまで来たので、ヴェルゲイルが主幹するベッドルーム・コミュニティ・レーベルのアルバムを購入し、その場にいたアーティストにサインをしてもらいました。これらのサイン入りアルバムは ICELANDiaのショップで販売中。 この人はサム・アミドン。アメリカ人ですが、アイスランドによく来て、このコミュニティのレーベル・メンバーとして様々な活動をしています。 ひょうきんな顔でポーズをとっているのはベン・フロスト。コミカルなことを言う人で、ストイックな音との落差に笑います。彼の実験的な試みは賛否両論を招くけれど、それが時代を牽引していくことにもなるので、私はすごく応援しています。 サインをするヴァルゲイル。このスタジオ見学も今年のツアーに組み込めないかと考えましたが、今年はシガーロスのスタジオ見学時間と同じ時間じゃないと無理と言われたため、シガーロス・スタジオを優先せざるをえず断念しました。「来年はぜひ日本の音楽ファンのみなさんと来てほしい。特別ライブもセッティングするから」と言ってくれました。有り難う! この時、なぜグリーンハウス・スタジオという名前にしたのか、という質問をすると、笑ってしまうような答えが返ってきました。 Valgeir「グリーンハウスっていうのは冗談なんだ。一番似つかわしくない名前にしたんだ。」 Y「??でも、この周囲は緑がたくさんあると思うけど」 V「最初にスタジオを作ったところは、ごく小さくて汚くて、グリーンなんて全く無い場所だったから、冗談で温室(グリーンハウス)スタジオって言った。それが徐々に大きくなって、本当に緑に囲まれたこの場所に落ち着くことになった」 なるほど、名前に相応しい場所に変貌していったってことね。素晴らしい。 15:00 アートフェス、Sequencesのあちこちを見る 今回の旅行はあまりキチンと時間割をつけていないのでアバウトですが、ベッドルームのスタジオから市内に戻った後、アートフェスティバルのシークエンシズのあれこれを少し見て回りました。 16:00 共同リハーサル・スタジオで7oiに会う この場所こそ、冗談でしかグリーン・スタジオと呼べないような、大いに散らかったバッチイ物置のような共同リハーサル・スタジオ。ヴァルゲイルのスタジオは閑静な住宅街にありましたが、こちらは街中。 翌日、シガーロスのスタジオ見学後に7oiクンに演奏を頼んであるので、「本当に大丈夫だよね」という念を押しにやってきました。アイスランドって、いい意味でゆるくて、なのでドタキャンも頻発します。が、そんなことに慣れていない(私以外の)日本人に対してドタキャンは困るので、口約束やメールだけではなく、私は出来る限り事前に顔を出して再確認して、それで物事を進めるようにしています。 でもって、7oiと記念ショット。私の身長は164センチで、決して低くないんだけど、この国の男性と写真を撮ると、いつも子供みたいに小さく見える(笑)。 ここは本当にいろいろなアーティストが共同で使っていて、新進Kimiレーベルの在庫置き場でもあり、たまり場でもあるため、ちょうど話題のFM Belfastが地元英語ペーパーのGrapevineからインタビューを受けていました。 17:00 Dimmaレーベル、オーナー宅 ディンマというのはごく地に足のついた音楽レーベルで、ジャズや(ジャズ寄りの)童謡、ヴォーカルものなど、オーナーが気に入った音楽のみをごく少数セレクトして出しているレーベルです。自宅がオフィス。 ICELANDiaの隠れたベストセラーが『Hum』というアルバムで、アイスランド航空の機内でもよく流されている、とても美しいピアノ・アルバム。アイスランド人なら誰でも知る民謡を美しいピアノで奏でるアルバムで、誰が聞いても納得の一枚。音楽として美しいばかりでなく、郷愁をさそうメロディなので、そこらへんが日本人にも受けているようです。 このアルバムは取りに行かないといけないので、毎年一度の仕入れとなります。 18:00 ローカルなシーフード屋で衝撃の事実発覚? 街中の店をふらふら見ながらホテルに戻り、少しだけ荷物を整理。そして向かったのが、ごくローカルな雰囲気のシーフード屋。庶民的な値段で海老スープを提供しているところであるとはいえ、去年は高かったよなぁ。値段が全部倍だったもん。 これが噂のスープ。一杯950iskだったかな。今年のレートの900円程度であれば納得。 こちらが串刺しになった新鮮なシーフード。一本1200-1500isk。鯨肉等々もあったけど、白身魚とサーモンが一番おいしそうでした。 ここで衝撃の事実発覚!私の斜め前に座った男性が「英語は分かる?」と尋ねてきました。ひとりのようなので、話相手が欲しいのかな。 「英語はしゃべりますよ。日本語の方がうまいけど。アイスランド語は単語3-4個だけ。あなたはどこからいらしたの?」 こうして始まった会話から知ったのは、彼がフランス人の経済記者であること。それから、「日本がアイスランドの交響楽団の来日公演をキャンセルした」ということ。『英語が分かる?』と尋ねてきた割には、あまり英語が話せない人だったので、詳細はどうもわかりませんが、それでもどうやら、判明したのは、日本側がオーケストラに来るなと言ったらしいということ。 あり得ない!!絶対にあり得ない!日本の、それもクラシック畑の招聘元が、この場に及んで、相手国の経済的なことを理由に「来るな」と言って公演を中止するなんてぜ〜〜ったいにあり得ない! でもこのフランス人記者君は言う。「今日の記者会見で言ってた。日本側が中止を言ってきたって」。 マジか。日本人キチガイになったアルカ。あり得ないぞ。それはきっと絶対に違うぞ。経済危機よりも、こちらの方が気になる。日本国民の気質としてあり得ないでしょう。経済的が起こった国からは来て欲しくない、公演に興味なくなったなんて、言うわけないっしょ。 いてもたってもいられなくなり、ほんの2ヶ月まで日本に5年間駐在していた外務省職員にその場から電話を入れる。その職員も「私もそれを今日聞いて、あり得ないと思った。こちらも真相はまだよく把握してない。ところで明日、ランチでもしないか?」ということで、どちらにしても会いたいと思っていたので、翌日会うことに。 あぁ、気になる、気になる。あり得ない、公演二週間前になり、来るなって日本人が言うわけない!! 21:00 HildurとKaputの特別ライブ ホテルに戻ってゆっくりお茶をして、それからアートフェスのSequencesで、新生ムームの主要メンバーでもあるHildurと彼女の父親が指揮者であるKaputアンサンブルがライブをやるというので港の倉庫街へ向かう。 ホテルを出ると三人も人が歩いている。通常は人通りゼロがデフォルトなので、3人もいるということは、きっとライブ会場に向かうのだろう。案の定、そうだというので彼らにくっついて行くことにする。 みんな背の高い男子なので、 足が速い!いくら早足で有名な私も時々小走りしないと追いつかない。そして辿り着いたのが、港の先端近くの倉庫街の・・・どこか(笑)。 事前予約が必要な催しで、ちゃんと予約をしていたので問題なし。「部屋の真ん中の作品はとても壊れやすいので注意しながら、ゆっくりとご鑑賞ください」と言われて中に入ると、主役であるヒルドゥルがいた。私の顔を見ると「え〜、日本から遙々来てたんだ。そうか、エアウエイブスの時期だもんね」と喜んでくれました。 アイスランドって本当に面白い実験的なことをやるところで、エアウエイブスは音楽の祭典として面白いし、このシークエンシズでも今年は積極的に音楽アーティストのイベントも行っていて、たぶんそれは、エアウエイブスの「色」に入らないものは、このアートフェスで試みようということであると解釈しました。 例えば、去年のエアウエイブスでベッドルームのベン・フロストが行った試みは、たぶん音楽よりも、シークエンシズのアートという観点で見た方が、理解しやすかったのではと思う。それは5人のギタリストが30分間ひたすら同じコードを演奏しつづけるというもので、私は大変に面白く実験的な試みだと見たけれど、「あんなの音楽じゃない」と片付ける人もいて、正直その気持ちが分からなくもなく、既成概念の中での音楽というカテゴリーから逸脱するようなものは、このアートフェスで取りあげた方が、座りがいいのだろうと思う。 きっと来年は、シークエンシズの音楽プログラムがすごく充実するんだろうなぁ。今年も、地方に出てさえいなければ、本当はヨハン・ヨハンソンの指揮したコーラスを見たかったもん。 これが会場の真ん中にあったアート作品。鏡のようでとてもきれいでした(写真がヘタで失礼)。 灯りを落として行われたこのライブは、聴衆が作品を囲んで丸く座り、演奏者はその聴衆を囲むように会場のあちこちに点在し、梁の共鳴を使ったり、管楽器の方向を変えるなどして、音楽が360度から聞こえてくる。飛行場の滑走路にちなんだ楽曲(ブライアン・イーノの「Music for Airports 2/2」等)なので、そのサラウンド効果がとても面白い。聴衆の中には、昼間会ったベッドルームのヴァルゲイルやベンの顔も。 22:30 先発グループ到着 さて、ここからもう私はあまり自由時間がなくなります(といっても、アイスランドに行っている間、ごく個人的な時間は本当に少ないのですが)。 Iceland Airwavesツアーの先発組の到着です。みなさん、長旅を本当にお疲れさまでした! 旅行代理店担当者によれば、何でもデンマークの空港で「アイスランドでは両替できない」とか、「クレジットカードが使えない」と脅されたそうで、 「小倉さん、本当ですか?」と真顔で尋ねられました。 これに関しては現地からもレポートしましたが、外貨をアイスランド・クローナに両替するのは、諸手を挙げてウエルカムです。でもアイスランド人が高額の外貨を引き出そうとすると問題があるようです。また、アイスランド国外のアイスランド銀行内にある預金(Icesave)も凍結されているため、これも引き出せません。 簡単に言えば、日本の銀行や金融機関が発行するクレジットカードは、何の影響もありません。お金が引き出せないどころか、無理にでもISKを引き出して使っていってくれという感じでしょう。 就寝前 日本へ電話 とにかく腑に落ちないのです。経済破綻の方が絶対的に重要で大きな出来事ですが、交響楽団の公演中止が気になって仕方ない。なのでご迷惑と知りつつ、駐日アイスランド大使館へ電話を入れさせてもらいました。 差し障りのないところで詳細を教えていただき、結局は日本で報道されている以下の通りだそうです。 「アイスランドから来日する予定だったアイスランド交響楽団の公演が、同国の金融危機の影響で取りやめになったことが10月15日分かった。 公演中止となった東京都墨田区のすみだトリフォニーホールによると、今回のツアー資金は日本側と同楽団で負担することになっており、金融危機で資金調達が困難になり、来日中止を決めたという。」 どちらにしても、日本側から無下に”来るな”と言ったようなニュアンスはどこにもなく、アイスランド側の間違った報道であると私の中で結論づけ、安眠に至りました。ホーッ。 (小倉悠加 / Yuka Ogura) Oct 14 ,2008 Got back to Reykjavik from Isafjordur. It was great visiting Greenhouse Studio. Many thanks to Valgeir and people at the studio. You guys are all great! I love to visit you again. It was also great to meet you again, Joi. Thanks for everything. Yuka 2008年アイスランド・ビジュアル・アート大賞受賞作家ジュエリー↓ アイスランドの音楽がいっぱい!↓ |
by icelandia
| 2008-11-01 23:30
| アイスランドってどんな国?
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