ヨハン・ヨハンソン初演、ピアノ・ソロの誤解:打ち込みも鳴るキーボード・ソロのライブです!! |
前回のブログでピアニストの矢沢朋子さんがヨハン・ヨハンソンの新曲を初演することをお伝えした後、どーも矢沢さんとのメールのやり取りで腑に落ちないことがあったため、それをちょっとばかり探求しました。 腑に落ちなかったのは、矢沢さんのライブは「ピアノ・ソロ」と銘打たれているけれど、どうも「ピアノ・ソロ」じゃなさそう。 みなさんは「ピアノ・ソロ」のライブに何を想像しますか?私は舞台の上にグランド・ピアノが一台あり、それをピアニストが演奏するという、至極単純なことです。 でも、実際はどうやらいろいろな楽器の音が鳴るっぽい。その点を矢沢さんに尋ねると、ピアノを演奏しながらモジュールも鳴らすし、打ち込みの音も出てくる、と。 それって、全然ピアノ・ソロじゃないじゃぁ〜〜ん!!単純に言葉の意味だけを見ても、ピアノ=ピアノ(生ピアノ)、ソロ=単一(独演)でしょう。生ピアノの独演だけじゃない場合は、サブタイトルに「電子楽器鳴らします」等の説明を付けてくれないと、全くの誤解になる!! という意を矢沢さんに投げると、クラシックの世界ではモジュールなんていうのは楽器として認識されず、舞台に出て演奏するのは一人なので「ピアノ・ソロ」というタイトルにした、と。 クラシックの場合「ピアノ・リサイタル」とタイトルをつけても、「ピアノ・ソロ」なんていうのは邪道(ポピュラー寄り)で、普通はつけないのだそう。 キ”ャ〜〜、ポピュラーの世界ではあくまでも生ピアノのことをピアノと言います。が、クラシック界ではモジュールなんていうのは楽器じゃないから、ピアノ+モジュール(+打ち込み)でも、「ピアノ」としか表現しない、と。 これには矢沢さんも私もカルチャー・ショックです(笑)。 それじゃジャズ界ではどうなのかと思い、「ピアノ」や「ピアノ・ソロ」についての見解を、現在ジャズ評論家としてバリバリに活躍中の杉田宏樹氏にお尋ねしました。 杉田さんの場合は、明確な線引きをしてこれらの用語を使っているそうです。 以下、 ご本人から許可を頂いたので、彼の言葉をそのまま引用します。 「「ピアノ・ソロ」とは第一義に2名以上の編成における「ピアノ独奏」です。例えばピアノ+ベース+ドラムスのトリオにおいて、イントロやエンディングでピ アノだけが演奏する場合がこれにあてはまります。またテーマの後にピアノが主旋律を奏でてアドリブを展開し、ベース+ドラムスがバックをつける状態を指す 場合もあります。 これに対して「ソロ・ピアノ」はピアニスト1人だけのパフォーマンスを指します。キース・ジャレットが第一人者であることはご存知かと思います。」 な〜るほど。だとすると、矢沢さんのライブは「ソロ・ピアノ」であって、「ピアノ・ソロ」ではない、と。読者のみなさん、すぐにピンとこない場合は、今回のブログはゆーっくり読んでくださいね! そして、ピアノを演奏し、モジュールによって様々な楽器の音が奏でられる場合は、 「ノルウェ−のブッゲ・ヴェッセルトフトが好例かと思われます。ジャズにおいて電気的な要素が加わった場合は、その旨を記述するのが一般です。ピアノはピアノであって、それから派生した音が出る場合は、そのプラスαの部分を解説するのがぼくらの役割ということになります。」 ということなので、ジャズ界においてもピアノ=生ピアノである、と。生ピアノ以外の音が出る場合はそのことを説明すべきであるということは、裏を返せば、説明しないで「ピアノ」と書くと、生ピアノだけと認識されることになります。 なので、前述のジャズ・ピアニストの場合は「キーボード・ソロ・パフォーマンス」という言い方になるのだそう。 杉田さん、丁寧に教えていただき有り難う御座います。m(__)m 杉田さんの活動を知りたい方は、ぜひ以下のサイトへお立ち寄りください。 杉田宏樹のジャズダイアリー http://www.7oaks.co.jp/jazzdiary/index.html それで、ジャズ評論家の見解も分かったので、「ピアノ」にこだわらず「キーボード」という言葉を使ってはどうかと矢沢さんにお伝えしたところ、ピアノは調律師も含めて非常にこだわって選択しているので、それをキーボードにするわけにはいかない、と。なるほど。アーティストのこだわりはとても大切です。 ちなみに今回、矢沢さんが演奏するピアノはベーゼンドルファーというオーストリアで製作される最高級品で、スタインウェイやベヒシュタインと並ぶピアノ御三家の名器のひとつ。日本ではヤマハが取り扱っています。っちゅーか、ベーゼンドルファーはヤマハの子会社。 今回はそんな中でも最上位機種のインペリアルを使用し、鍵盤の数も通常の88鍵ではなく97鍵を演奏。この音質がメチャいいそうで、ピアノ最大の音域を持つベーゼンドルファーの音を聴きに行くだけでも価値ある機会になることでしょう。 なので、クラシックにはあまり馴染みがないけれど、ヨハン・ヨハンソンやオーラヴル・アルナルズのようなセミ・クラシック、それから、例えばヴァルゲイル・シグルズソンのような凝った音作りをするアーティストが好きであれば、矢沢さんの演奏はきっと気に入ると思います。 「ピアノ・ソロ」とはいえ、実際は杉田さんが言うように「(電子楽器等も鳴るピアノにこだわった)キーボード・ソロ・パフォーマンス」で、電子音も打ち込みもバンバン鳴ります。テクノ?ファンク?トランス?って感じの曲もあるようです。レディオヘッドもでてくるし、特にヨハン・ヨハンソンは彼女のために書き下ろされた曲の初演なので、ぜひ聴いておきたいものです!! 矢沢朋子ピアノ・ソロ 〜現代音楽への誘い〜 2010年2月27日(土) 開演 19:30 / 開場 19:00(夜公演) 杉並公会堂小ホール (東京都) 問い合わせ先:東京コンサーツ(03-3226-9755) http://www.tokyo-concerts.co.jp/index.cfm?lang=jp&menu=concerts.2010022701 *** ICELANDia 音楽ショップの福袋は1月末日で販売が終了します。2月1日の午前1時に表示されなくなるので、この機会にアイスランド音楽を囓りたい方はぜひどうぞ。一覧はここ。音楽だけではなく、アウルム(aurum)のジュエリーを組み合わせた福袋もあるので、それも狙い目です!!(小倉悠加 / Yuka Ogura) アイスランド音楽の福袋1月末まで発売!↓ 2010年もぜひアウルムにご注目ください↓ |
by icelandia
| 2010-01-31 03:16
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