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本レーベルは、Excite Music Store及びモバイルコロムビア上で先行独占展開され、配信される楽曲は、国内で入手が困難な高いクオリティのアイスランド楽曲を幅広いジャンルで集めていきます。
レーベルリリースの第1弾は、ヨーロッパでは名高いアイスランドJAZZを展開、第2弾は、アイスランドPOPS、第3弾は、アイスランドクラブミュージックを展開していく予定です。
小倉悠加
(おぐらゆうか Yuka Ogura)
70年代半ば洋楽に目覚め、単身アメリカへ留学。大学時代から来日アーティストの通訳に従事し、レコード会社勤務を経てフリーに。以来、音楽業界で幅広く活動。カーペンターズの解説の殆どを書いているためカーペンターズ研究家と呼ばれることも。2004年自らアイスランドの音楽を扱うアリヨス・エンタテイメントを設立。ミュージック・ペンクラブ会員。
小倉悠加

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日本公開決定『Screaming Masterpiece』アイスランド音楽ドキュメンタリー映画
 音楽ファンのみなさん、手放しで喜びましょう。映画『Screaming Masterpiece』の日本公開が決定したようです。邦題や、公開時期等は近々に決定されると思います。
 この映画については、8月に一度ご紹介しているので、内容は以前のブログをご覧ください。アイスランド音楽シーンについてのドキュメンタリーで、もちろんICELANDiaのアーティストも取りあげられています。
 (・・・ヨーエル・パルソンの特集を書きたいと思ってるんだけど、少しの間ニュース続きかも。)
 
日本公開決定『Screaming Masterpiece』アイスランド音楽ドキュメンタリー映画_c0003620_1975775.jpg  そして、公開が待ち遠しくてたまんない!という方にお知らせです。
 以下の場所で、予告編(Trailer)を見ることができます。
 http://ergisfilmproduction.com
 このサイトのサーバーは非常に遅いので、見る側がブロードバンドであっても、10分以上かかることを覚悟してください。また、解像度の異なる予告編が2本置いてありますが、内容も異なります。一本目は英語ヴァージョンで、二本目はアイスランド語の予告です。言語が異なるだけでなく、画像や雰囲気も違います。
 
 ビョークのシーンはフジ・ロックのようですね。Airwavesは去年と一昨年のように見えます。シガーロスのライブはどこのだったんだろう?どのような内容になっているのか、いやぁ、本当に楽しみです。これで音楽ファンのみなさんに、私がなぜこれほどアイスランドの音楽シーンに心酔したかを、垣間見ていただけることでしょう。
 
 私自身、映画を見ていないため、予備知識なしで見てどれほど理解できる内容になっているのかわかりませんが、きっと詳しい解説などをしつつご覧いただけば、もっとよく分かるのではと思います。いやぁ、本当に公開が待ち遠しいです。見たい!見たぁ〜〜い!!(小倉悠加)日本公開決定『Screaming Masterpiece』アイスランド音楽ドキュメンタリー映画_c0003620_22263649.jpg日本公開決定『Screaming Masterpiece』アイスランド音楽ドキュメンタリー映画_c0003620_13213440.gif
# by icelandia | 2005-10-28 18:15 | News | Trackback(3) | Comments(4)
ビョークの父親、名誉毀損で訴えられるか??
 野次馬的な話題ですが、ビョークがらみなので・・・。
 
 ビョークの父親は氷国電気技術者組合のリーダーのグズムンドゥル・グンナルソン氏。彼は先日、2Bという会社が外国人労働者を違法に雇っていたことについてを、「組織的犯罪」だと避難した。
 2B社の法律顧問は、許可を得ずに外国人労働者を雇ったことに対する当局からの勧告には異議を申し立てていないが、グンナルソン氏の「組織的犯罪」発言には名誉毀損で訴えたいほど腹立たしいと話している。
 
 ・・・・ということです。
 
ビョークの父親、名誉毀損で訴えられるか??_c0003620_19423345.jpgビョークのファンにお勧めは、同じアイスランド出身のバングギャング。ごく普通の音楽ファンは、表面の浮遊感に目がいくと思いますが、ビョークのファンであれば、その裏にあるアバンギャルドな精神を見抜くことができることでしょう。ぜひ試聴してみてください。オーティオ・ビデオの試聴。
購入はこちらで(送料無料)。
(小倉悠加)ビョークの父親、名誉毀損で訴えられるか??_c0003620_22263649.jpgビョークの父親、名誉毀損で訴えられるか??_c0003620_13213440.gif
 
# by icelandia | 2005-10-26 01:29 | News | Trackback(1) | Comments(0)
『鏡の中のアイスランド』リリース!:特集その1
 『Figaro』のアイスランド音楽特集でググ〜〜っと身近になってきたアイスランドの音楽。今回はあの巨匠マイルス・デイヴィスの『イン・ア・サイレント・ウェイ』を思わせるというヨーエル・パルソンのご紹介です。
 アイスランドの音楽コミュニティはそれほど多くないため、ポピュラー・アーティストとジャズ・アーティストの交流も盛んです。そんな中、ジャズ・アーティストとして活躍する傍ら、ジャズ・パンク(!)グループを組んだり、様々なプロジェクトを計画し、幅広い音楽性を示しているのがヨーエル・パルソンという新進サックス奏者。アイスランド最高峰のジャズ・アーティスト、シグルズール・フロサソンの愛弟子でもあり、なかなかユニークな活動をしています。
 そんなヨーエルも、もちろんICELANDiaのアーティスト!『鏡の国のアイスランド』のアルバム発売を記念し、ここに2-3回に分けてヨーエルの特集をしますが、まずはジャズ評論家の大御所である岩浪洋三さんがヨーエルに向けた言葉からどうぞ。以下の文章は今年初頭にも掲載しましたが、再登場させていただきます。
 ジャズ・ファンは大注目です!!! (小倉悠加)
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『鏡の中のアイスランド』リリース!:特集その1_c0003620_1501557.jpg
『鏡の国のアイスランド』ヨーエル・パルソン/エイソール・グンナルソン

アイスランドのジャズにはとてもデュオの演奏が多いのに気づく。それはシンプルな素材でナチュラルな演奏を好む国だからであろうか。そのため、なにか日本の民謡や童謡を聴いているような気分になり、親しみがわいてくるのである。もともと日本や東洋は昔はそれほど複雑なハーモニーが存在したり、好んだりした国ではなかったからだ。その意味ではアイスランドのジャズはなにか日本人の肌に合うところがある。とくに美しい旋律を好む点においても・・・。

このアルバムもじつはデュオであり、若手のテナー・サックス奏者ヨーエル・パルソンと中堅ピアニストエイソール・グンナルソンとの二人によって演奏されている。

テナーのヨーエルは1972年のアイスランド生まれで、9歳でクラリネットを学び、15歳で策すを吹くようになったという。そして自国で音楽教育を受けたあと、92年にアメリカのバークリー音楽に留学し、優秀な成績で94年に卒業している。アメリカで学び、プレイしただけあって、彼のサックス・プレイは技術も優秀だが、音楽的にもインターナショナルなものを持っており、プレイもレベルが高い。今人気のアメリカのテナー、エリック・アレキサンダーと比較しても遜色がない。本アルバムでは、アイスランドのスタンダードというか民族性の強いナチュラルな音楽を演奏しているが、モダン・テナーのジョン・コルトレーンあたりの進歩的なテナー・プレイヤーの演奏も十分消化した上でのプレイであり、随所でモダンなテナーのフレーズも聴かせてくれる。

ヨーエルのテナーは実によく歌っており、表情が豊かで繊細であり、バラードの演奏におけるニュアンスに富むプレイには、とくに心を惹かれるものがある。

このアルバムの原題は『SKUGGSJA』となっているが、”鏡”の意味だそうである。そこで、原題を少し意訳してアイスランドのポピュラー音楽の歴史やアイスランドの人々の生活を反映した音楽ということで、『鏡の国のアイスランド』にしたそうだが、そうすることによって、このアルバムの演奏が想像できるようになった。

アメリカのジャズには、ジャズの素材となるさまざまなスタンダードがあるように、アイスランドにはアイスランドのスタンダードと呼ぶべきスタンダードがあるようだ。そしてどの曲もアイスランドの美しい大自然を反映しているように感じるのは、ぼくだけだろうか。

このアルバムはヨーエルの4枚目に当たるアルバムだそうだが、彼が参加したアルバムは50近くもあるといわれる。またヨーロッパ各国を広く楽旅しており、フランス、ドイツ、英国、ノルウェイ、デンマーク、スエーデン、グリーンランドなどで演奏したことがあり、アメリカは勿論カナダでの演奏経験ももっている。

本作は第4作だが、彼のデビュー盤は『Prim』で、Naxosから世界に向けて発売された。第二弾は『Klif』はギターを加えたカルテットで吹き込まれ、2001年アイスランド音楽賞で、ジャズ・アルバム賞を受賞している。第3作は2002年に『Septett』と題されて発売され、やはりジャズ・アルバム賞を受賞している。このアルバムには師匠のサックス奏者シグルズール・フロサソンも加わっていた。

昨年の彼はサックス、ベース、ドラムスというトリオでジャズ・パンク・グループGramを結成してニュー・サウンドに挑戦した。一方でメゾフォルテのヨーロッパ・ツアーにも参加している。本作『鏡の国のアイスランド』では、このメゾフォルテのピアニスト、エイソール・グンナルソンとの共演であり、息もぴったりと合っている。エイソールのピアノは大変ピアニスティックで、センスのいいリリカルなプレイをみせているのがとても印象的である。ピアニストの”ツボ”をおさえた相の手がみごとであり、ベースやドラムスがなくても、安定した、バランスのいい広がりのある音楽を生み出している。ジャズのフィーリングも豊かだが、クラシックで鍛えたたしかな腕前と格調の高さも魅力だ。
このアルバムは演奏もさることながら、演奏曲の親しみやすさと旋律の美しさに注目したい。


まず一曲目の「カントリーサイド」に驚かされる。まるで日本の歌謡曲のようでもあり、またミッシェル・グランが書いたポップスのようでもあり、メロディは憶えやすくて美しい。なんでもアイスランドの国民的歌手Elly Vilhjalmsのために書かれた曲という。

「ディマリムの歌」はソプラノ・サックスで幻想的に奏でられるが、アイスランドの有名な物語で、子供用の絵本にもなっているという。確かに愛らしい曲だ。

「泣かないで」のちょっともの悲しいメロディも日本人の感性にぴったりの曲だ。心にやさしくひびく曲でもある。テナーの合ったかなひびきに包まれると、ふしぎに心が解放される。旋律はどこか日本の民謡風だ。

「スヴェン・ギー・エングラー」も大自然と調和するサウンドで、ジョー・ザヴィヌルが作曲し、マイルス・デイビスが演奏した「イン・ア・サイレント・ウェイ」とダブって聴こえる。ザヴィヌルの曲はオーストリアの羊飼いのメロディだった。なんでも「スヴェン・ギー・エングラー」はシガーロスの新作『()』の曲だそうだが、余韻の美しい曲で、このアルバムの中でもいちばん感動を覚えた演奏だ。

「シークレット」も同様のきれいなメロディをもったバラード。Datar & Runar Gunnarssonがヒットさせた曲だそうだ。このテナー・デュオにぴったりのフォーク的な佳曲だ。

「 涙色のローズの詩」はアイスランドのトラディショナルだそうだが、この国の人気者ビョークのヒットで、Hector Zazouのアルバム『Song from the Cold Sea』で歌っている。ここでヨーエルが吹いている低音楽器はバス・サックスであろうか。エイソールのリリカルなピアノの役割も大きい。

ビョークといえば、「少年ヴィーナス」はビョークのオリジナル。シンプルだが、魅力的なメロディだ。

「共に旅して」はコール・ポーターの「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」をスロー・テンポで演奏したら、こうなるといったメロディだ。

ラストのメガス作曲の「ふたつの星」にしても、どれもアイスランド的メロディというのだろうか、大自然と調和する曲ぞろいで、いずれもアイスランドの人々にとってはなじみの深い曲のようだ。ちょうど、アメリカのミュージシャンがアメリカのスタンダード・ナンバーをジャズ化するように、アイスランドのジャズメンにとっては、このアルバムの曲がスタンダード・ナンバーに当たるのであろう。聴いているうちに、どの曲もみんな好きになってしまった。『鏡の中のアイスランド』リリース!:特集その1_c0003620_23245028.gif
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# by icelandia | 2005-10-25 19:40 | Jazz | Trackback(2) | Comments(1)
腐敗度指数:アイスランド清潔度1位 日本17位
 トランスペアレンシー・インターナショナル(国際透明性機構:TI 本部:ベルリン))が2005年10月18日に発表した最新調査によれば、調査対象の世界159各国中、最も透明度が高く、腐敗していない国はアイスランドであるとの結果が出ています。日本はチリと並び第21位。
 ちなみに第一位から10位までは以下のよう:
 
2005年 腐敗度指数
 1.アイスランド
 2.フィンランド/ニュージーランド
 4.デンマーク
 5.シンガポール
 6.スウェーデン
 7.スイス
 8.ノルウェー
 9.オーストラリア
 10.オーストリア
 ・・・・21.日本
 
 そして、主なところはイギリス11位、ドイツ16位、アメリカ17位、フランス18位で、イタリア、韓国共に40位。腐敗度指数が最も高いのはアフリカ諸国となっています。
 
 アイスランド・ファンとしては喜ばしい結果ですが、日本国民としては心境は複雑。先進国としては、お粗末・・・。
 全ての結果一覧は以下のURLにあります。
 http://ww1.transparency.org/cpi/2005/cpi2005_infocus.html#cpi
 
 この指数の詳しい算出方法は上記ページをスクロールしてご覧ください(全部英語ですが)。
 ふーむ、どうも気分がすっきりしない時は、ギター・イスランシオでも聴いてさわやかな気分を取り戻しましょうかぁ。
 アイスランド、おめでとう!日本を牛耳っている人々よ、もっと考えて行動してくれぃ!(小倉悠加)腐敗度指数:アイスランド清潔度1位 日本17位_c0003620_22263649.jpg腐敗度指数:アイスランド清潔度1位 日本17位_c0003620_13213440.gif
 
# by icelandia | 2005-10-19 22:30 | アイスランドってどんな国? | Trackback(1) | Comments(3)
アイスランド音楽特集:話題満載の最終回
 『Figaro Japon』に掲載されたアイスランド音楽特集を祝ってのICELANDiaアイスランド音楽特集は今回が最終回です。え?もっと続けてほしい? リクエストを有り難う御座います。またこのような機会があれば是非やりましょう。
 
 今回カバーする3組のアーティストはウォーム・イズ・グリーン、ヒャルマル、そしてヨハン・ヨハンソンです。
 
アイスランド音楽特集:話題満載の最終回_c0003620_19423345.jpg その前に、バングギャングはお聞きになられましたか?オーディオ、ビデオの試聴はアーティストのサイトでできます。最新アルバム『サムシング・ロング』はICELANDia通販、アマゾンやHMV等の通販、または全国の大型店で御購入いただけます。

アイスランド音楽特集:話題満載の最終回_c0003620_1943587.jpg それにしても「緑の虫」というグループ名は面白い。Worm is greenなので、「虫は緑色」でしょうか。彼らの二枚目のアルバム『オートマジック』も、他のアーティスト同様、アイスランド的な透明な浮遊感があります。この種のサウンドではAmpopというグループと双璧を成し、どちらもThule(チューレ)というレーベルから同時期にリリースされています。ただアムポップはアマゾンでも取り扱いがないようで、残念。アムポップのグループは、アンビエント・ポップの略です。ウォーム・イズ・グリーンもアムポップも、どちらもエレクトロニカであり、オーガニックであり、そして時々囁くようなヴォーカルが入ったり・・・。
 アイスランドや北欧でエレクトロニカが盛んな理由は、かなり単純なことで、冬が暗くて長いため、その間に室内でやれることといえば、読書や音楽になってきます。そしてアイスランドは少し別の事情でも、エレクトロニカが流行りました。それはチューレというレーベルがあったからです。このレーベルはアイスランド初の本格的DJとなったソールが設立した会社で、数多くのアーティストとのコラボやプロデュース経験を元にチューレ・レーベルが作られました。元々チューレはスタジオで、そこにミュージシャンが集まり、「いっそのことレーベルを作っては?」という話だったようです。
 チューレの設立はアイスランドにとって非常にエポック・メイキングな出来事でした。それまでは、アイスランド国内向けアーティストしか出さなかった大手のスキファン(ごく最近、セナと改名)と、ビョークのおかげで細々と国際派のアーティストを育ててきたスメクレイッサしか存在せず、どちらにも属さないアーティストは行き場がありませんでした。そこにチューレが登場し、風穴があき、急激にエレクトロニカが盛んになっていきます。その周辺で登場して有名になったのが、何を隠そうシガーロスやムームです。チューレのスタジオは、ビョークも使っているし、カラシの最後のアルバムの録音もチューレでした。
 このチューレが一番華々しくなったのが2000年過ぎ頃で、その時代に出てきたのが、このウォーム・イズ・グリーンであり、アムポップであり、その他にはトラバント(シガーロス10歳のバースデイで演奏したグループ)、カナダ、エクソス、フューネラルズ、下記に出てくるヨハンのアパラット・オルガン・カルテットもチ同時期でした。ムームのデビューもですね。チューレからは数々のコンピレーションも放たれ、エレクトロニカを集結させたものなど内容はよかったのですが、販売網が限られていたこともあり、結局は経営に行き詰まってしまいました。現在はスタジオだけのオペレーションです。
 チューレの活動に刺激を受けて、アイスランド最大の出版社エッダが音楽部門を作り、ロック系の新進アーティストやジャズを取り扱い始めたこともありました。書籍の出版と音楽出版では分野も違い、やはり販売経路がなく、将来が期待できるアーティストがいたにも関わらず、このオペレーションも2年弱で閉鎖。
 チューレもエッダも結局は国際的にその名を馳せるまでに至らず、本当に残念なことをしました。現在のアイスランド音楽の頼みの綱は、相変わらずスメクレイッサと(これも最近どこかに吸収されたような?)、個性的な音楽ショップとして知られていた12トナーが2年前に立ち上げた独自レーベルだけでしょうか。閉鎖されたエッダの音楽部門担当は現在12トナーで働いています。また、チューレもエッダもその後原盤権の難問を抱え、まだ全ては解決していないようです。
 そんな中で生き残ったのがウォーム・イズ・グリーンであり、イギリスへ移ったアムポップ。そしてトラバントは独自に生き残り、アパラットも健在です。

 このような裏話をするのは、アイスランドの音楽は英米のレーベルとは全く違う機構の中から生まれてきたものなのだ、というのを少し知っていただきたいからです。文化交流や文化支援というと、発展途上国やフランスやイタリアといった歴史的伝統のある国々ばかりに目が行きますが、そんな中で意外にも一番苦しい思いをしているのは、先進国でありながら、人口が少なく、伝統も浅く、孤島という地理的条件から交流がとりにくいアイスランドなのです。アイスランド政府はそういった事情を踏まえて芸術活動に関して、条件の良いサポートをしていますが、狭い国の中なのでどうしても限りがあります。海外との接触ということでは、ヨーロッパや北米であれば自分たちの力でプロモーションへ出ていくことも出来ますが、文化も言語も全く異なる日本は、とても興味があるけれど自分達ではどうしようもない場所です。
 アイスランドは良くも悪くも人口30万人の孤島。同じ孤島でも人口1億2千万人とは規模が違い過ぎます。アイスランドのアーティスト達と話していると、世界からの疎外感を抱いている人物がいかに多いことか・・・・。話は随分と逸れましたが、自社アーティストでなくとも必用あればいかなるアーティストのサポートも喜んでしているICELANDiaは、彼らにとって日本との大切なパイプであり、文化ボランティアなのです。
 
アイスランド音楽特集:話題満載の最終回_c0003620_19453158.jpg ヒャルマルはICELANDiaアーティストです。首都レイキャヴィークから40-50分も車を走らせると、国際空港のあるケプラヴィク(ケフラヴィク)に到着します。ここは基本的にはアメリカ軍の街であり、国際空港も元を正せば米軍基地をいわば平和利用していたのです。アメリカ軍が駐在するようになってから、米軍放送と共にアイスランドのロック史は始まり(事情は日本と同じ)、ケプラヴィクは若者の音楽、ロックの街になっていきました。ヒャルマルもこの街で結成されました。
 ケプラヴィクからはアイスランドのビートルズと言われた名門グループが生まれ、現在でも時々ポッと、素晴らしいグループが出てきます。最近の代表格がこのヒャルマルで、世界最北のトロピカル・バンド。牧歌的なレゲエのリズムにアイスランドの伝統や、奇想天外なストーリーを織り交ぜ、2005年初頭に行われたアイスランド音楽祭で見事に新人賞を受賞。この夏、最もアイスランド国内でヒットしたのが、このヒャルマルでした。
 ヒャルマルの日本での音源の権利はICELANDiaにあり、本格的なリリースは来年を予定しています。テストケースというか、音楽ファンのみなさんがどのような感想を持たれるのかを知りたくて、限定数のみネット販売しているので、早く聴きたい!という方はどうぞご利用ください。
 ヒャルマルの代表はレーベル・オーナーでもあり、アイスランド・ロックの歴史的名盤を中心に、ボチボチと復刻している人です。アイスランド・ロックですが、かつてはこれがまぁ笑ってしまうほどイギリスのマージー・ビートだったり、アメリカのウエスト・コースト・ロックだったりします。そこにアイスランディックな響きが少々入り、音楽マニアにはかなりたまらないものがあると私は見ています。なのでICELANDiaでもぜひアイスランド・ロック名盤復刻シリーズをやりたいと考えていますが、数年先の話でしょうか。
 
 最後はヨハン・ヨハンソンです。ヨハンは私が初めてアイスランドへ行った時に会った人物のひとりで、以来、アイスランドへ行く度に会います。私の中では「アイスランドの坂本龍一」というのがキャッチで、彼の音楽をぜひ広めたいのですが、ライセンス契約は難しいとのこと。出来る範囲で個人的に応援するからね、という範囲にとどまっています。
 ヨハンは現在でこそ、新進気鋭のアンビエント・エレクトロニカや環境音楽的なものを手がけていますが、この人の音楽バックグラウンドは非常に長く、初期の頃はパンク・バンドにも在籍しました。その代表格がハムというグループ。アイスランドの歴史的パンク・バンドとして有名で、典型的なセックス・ドラッグ・ロックンロールの世界でした。ヨハンが在籍していたのは、ほんの一時期でしたが、いやはやすごいバンドに居たものです。
 ヨハンは劇場劇の音楽や展示会のインスタレーション等を手がける傍ら、ウンウン(unun)やルークといったポップス・グループに参加し、そういった活動のどの程度がアルバムとして残っているのか、私も全貌を知りませんが、例えば元シュガーキューブスのメンバーであり、バングギャングのドラム奏者として来日した人物とDIPを組んだ時は、『Hi Camp Meets Lo Fi』というアルバムを残しています。エミリアナ・トリーニ(この特集のパート1で登場したシンガー)が一曲ヴォーカルで参加していました。
 
 私がヨハンに心酔したきっかけは、『エングラボーン』でした。アルバムも素晴らしい出来ですが、そのライブには全く脱帽でした。セッティングも良すぎたかもしれません。あれは2003年10月。Airwavesのイベントのひとつとして、レイキャヴィークの丘の上にある街のシンボル的存在のハトグリムス教会(ハトグリムスキルキャ)で『エングラボーン』のライブが行われました。
 メンバーは弦楽四重奏団、キーボードとマックを駆使するヨハン、パーカッショニストのマシアス・ヘムストック(最高!)。教会という荘厳なセッティングの中で、深い雪の中にしんしんと雪が積もり続けるごとく、静かに、音の粒をポロンポロンと落としていくような、そんな感じのライブは、静寂の中に音があることをありありと感じさせるものでした。残酷なまで美しいその音は、衝撃的でもあり、また演奏の半ばから教会の中に夕日が差し込み、会場内がピンクに染まり、それは美しかったこと。このようなライヴを体験してしまうと、下界へ戻れない心境になります。『エングラボーン』のアルバムを聴くと、今でもあの雰囲気が実感としてありありと蘇ります。
 演奏の数時間後、市内の有名レストランで、ライヴの主催者、ヨハン、私の3人で食事をしたことも、今では夢のような思い出になっています。
アイスランド音楽特集:話題満載の最終回_c0003620_19444717.jpg 次に発表された『ヴィルズレグ・フォルセタル』の音楽にも、『エングラボーン』と共通する凛としたサウンドがあります。このアルバムも教会でライブを行い、その時は音楽に合わせて色とりどりの風船が落ちてくるようにしたそうです。きっとこれまたひどく印象的で素晴らしいものだったことでしょう。
 この後、映画のサウンドトラック『ディス』を出しています。こちらでは明るく、ポップで、ムーム的な楽しげなエレクトロニカも聴けます。
 彼の活動は本当に多岐にわたり、こういった合間にもコンスタントに劇場劇の音楽を作り、フランス、ドイツを中心にシンクタンクのキッチン・モーターズの一員としても展示会等を飛び回り、結局アイスランドで過ごせる時間はさほど多くなく、ヨーロッパ本土/アイスランド間の移動の便利も考えて、一年半ほど前から拠点をヨーロッパに置くようにしたようです。広く世界的に活躍するのはいいことですが、アイスランド国内では音楽演奏だけを職業にして生計を立てることが困難なため、必用に迫られて、海外に移住するアーティストも少なくありません。頭脳流出とまでは言いませんが、もう少しアーティストを暖め育て、自国の中で活躍する場があれば、家族と離ればなれになったりということも少なくなるかと思います。
 
 アパラット・オルガン・カルテットは、ヨハンのソロ・プロジェクトの音楽とは切り離して考えてください。音楽的には全く別物です。
 グループ名は、アパラット=機械、オルガン・カルテット=4人のオルガン奏者。ここにドラムスが加わり5人組です。キーボード奏者一人につき2台を操るため、キーボードは計8台になります。機械仕掛けのオルガン奏者というコンセプトなので、ステージでは絶対に笑顔を見せず無表情。デビュー・アルバムのタイトルにもなった『Stereo Rock & Roll』では、ヘンテコな振り付けまであり、ちょっと風変わりなライブを展開します。
 アパラットはクラフトワークと比較されることが多く、確かにそんな雰囲気は濃厚です。使用しているのは最新シンセではなく、廃品キーボードが中心。冗談ではなく、アイスランドの清掃局に協力者がいて、よさそうなキーボードが捨ててあるとヨハンのところに連絡が入ります。それを自宅のスタジオに運び入れ、調整を加えるのです。なにせゴミなので、出ない音も調整不可能な音もあります。でも、その出ない音は「個性」として重んじるので、そのまま使用している古いシンセが何台かあります。
 アパラットのメンバーはヨハンを中心に、それぞれみな異なる職業についています。ツアーをするといってもメンバーのスケジュール調整が大変で、レコーディングも同じこと。彼らのファースト・アルバムを気に入った超大物ロック・プロデューサーから、自分の指揮下でこのアルバムを作り直し、大々的に売り出したいという提案がありましたが、結局これも、メンバーが何ヶ月もアイスランドを離れてレコーディングに専念することは出来ないため、流れてしまったようです。セカンド・アルバムは制作中ですが、いつ出てくるやら・・・。
 アパラットのアルバムは、前述のチューレの事情により、なかなか入手困難です。一度私のサイトでも販売しましたが、すぐに売り切れてしまいました。絶盤にはなっていはずなので、入ってきたらお知らせしますね。

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 今回のフィガロの特集で、アイスランドの音楽が持つ共通した雰囲気を誌面から感じ、私の長いブログで、その裏側やミュージシャンのつながりが少しは見えたでしょうか?お楽しみいただけたことを願っています。
 
 最後になりますが、素敵なアーティストをピックアップし、厳しい字数制限の中、彼らの魅力を凝縮して紹介してくださった伊藤なつみさんと、その紹介を美しい誌面に仕上げてくださった編集の新山桂子さんに、この場を借りて心から感謝いたします。
 『Figaro Japon』のこの特集、10月19日までは店頭にありますので、まだ見ていない方、ぜひお手にとってご覧くださいね!(小倉悠加)アイスランド音楽特集:話題満載の最終回_c0003620_22263649.jpgアイスランド音楽特集:話題満載の最終回_c0003620_13213440.gif
 
# by icelandia | 2005-10-15 19:48 | Pops | Trackback(5) | Comments(5)
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